昨今の新型コロナウイルス流行の影響もあり、多くの企業が従来の働き方を見直すタイミングに差し掛かっています。働き方改革が企業により進められ、働きやすさが重視される職場環境へと変化しています。その中で従業員の離職率の低下を防ぎ、業績を向上させるため、従業員が企業に対する愛着と貢献意欲を高める施策が必要です。その施策の指標となるものが「従業員エンゲージメント」であり、その重要性が今非常に高まっているのです。本記事では、「従業員エンゲージメント」の解説、メリット、成功のポイントについて解説していきます。従業員エンゲージメントとはエンゲージメント(engagement)は、契約、債務、婚約、雇用などの意味を持ち、「深い繋がりを持った関係性」を示す言葉です。従業員エンゲージメントとは、従業員が企業に対して愛着を持っていて、自発的に企業に貢献したいと考えている状態のことです。つまり、従業員が会社に対して感じる繋がりや、献身的な関わりの度合いを指しています。仕事に対する情熱、忠誠心、モチベーションなどに影響を与える重要な要素で、組織全体の生産性や士気に直接関係しているのです。エンゲージメントが高い従業員は、仕事への積極的な姿勢を持ち、チームや会社の目標達成に貢献するために自ら行動します。自分の仕事に意味を見出し、満足感を得ることにより、会社への長期的な忠誠心を築くことに繋がります。逆に、エンゲージメントが低い従業員は仕事に無関心であったり、会社のビジョンや目標に共感していないこともあり、労働の質の低下、全体的な業務の非効率化、離職を招く可能性があります。従業員エンゲージメントの概念や高める方法、従業員エンゲージメントを高めることでのメリットについて、事例を踏まえて解説します。従業員エンゲージメントの3要素従業員エンゲージメントを維持または向上させるためには、どのようにすればいいのでしょうか。これには、大きく3つの要素に意識を向けることが重要です。理解度帰属意識行動意欲これらの要素を意識することで、従業員エンゲージメントを促進することができます。それぞれ詳しく見ていきましょう。理解度従業員エンゲージメントの「理解度」は、社員が自社のビジョンや目標をしっかりと把握し、それに共感し、一致することで得られます。この理解により、社員は自らの役割が会社の成功にどう結びついているかを明確に認識でき、結果としてモチベーションと成果が高まります。理解度を高めるには、会社がビジョンや目標を透明かつ一貫して伝え、社員がそれを消化するためのサポートを行う必要があります。帰属意識従業員エンゲージメントの「帰属意識」は、従業員が自身を会社やチームの重要な一部と感じることです。この感覚は、組織への強いコミットメント、仲間との良質な対話と、結束力の向上を促し、職場での満足度と忠誠心を高めます。帰属意識が促進されると従業員は会社の目標達成に積極的に貢献し、組織全体のパフォーマンス向上へと繋がります。行動意欲従業員が自社の方針や目標について深く理解し、それに賛同することで、自らの仕事が組織全体の目標にどう貢献しているかを認識し、仕事へのモチベーションを高めます。このモチベーションこそが、行動意欲です。これには、透明性と一貫性を持って情報を共有し、それを理解するための支援が必要です。理解だけでなく、自分が大きな組織の価値ある一部であると感じることが、エンゲージメントをさらに強化するのです。従業員エンゲージメントに似ている言葉、その違い従業員エンゲージメントと混同しがちな言葉がいくつかあります。これらを正しく理解するために、従業員満足度やモチベーションなど、似たような用語と、従業員エンゲージメントとの相違点を確認してみましょう。従業員満足度との違い従業員エンゲージメントに似ている言葉で従業員満足度があります。従業員満足度は、その名の通り会社での従業員の満足度を示す言葉で、働き方、福利厚生、人間関係に従業員が満足をしているかを表すものです。従業員が企業への愛着や貢献意欲を持つ状態を指します。従業員満足度が高い場合でも、必ずしも従業員エンゲージメントが高いとは限らないとされています。満足度がエンゲージメントに直接つながるわけではないが、満足度の低い環境ではエンゲージメントは育ちにくいという関係があります。ロイヤリティとの違いロイヤリティ、すなわち忠誠心は、日本のビジネス文化において長らく重んじられてきた考え方です。従業員が企業に対して強い忠誠心を持つことは、組織に対する献身や労働生産性の向上に繋がる可能性があります。しかし、この従来の主従関係の強調は従業員の自立性を損なう側面もあり、主体性や創造力を必要とする現代の業務環境においては、十分な成果が得られないこともあります。したがって、従業員が自分の判断や創造性を発揮できるような企業文化へのシフトが、現代のビジネスシーンにおいては求められています。コミットメントとの違いコミットメントは、従業員が会社の目標や義務に自らを紐づけ、それに対し責任を持つ意識の表れです。企業が明確な期待を示し、従業員はそれに対して積極的に取り組むことを要求します。コミットメントが従業員に対する外部からの期待や要求に焦点を当てるのに対し、エンゲージメントは従業員自身の内発的なモチベーションと結びつくのです。現代の人事管理では従業員の自立性や内発的な動機付けを促すことが、サステナブルな成果と充実した職場環境を生み出す鍵とされています。モチベーションとの違い従業員のモチベーションは個人の内発的な動機付けをさし、その個人が自らの業務に対して意欲的であるかどうかという心理状態を表します。報酬、キャリア成長のチャンス、仕事の充実感、承認や評価といった要素から影響を受けます。一方、従業員エンゲージメントは、従業員のモチベーションに加えて、その従業員が組織とどのように関わっているかという側面を強調します。従業員エンゲージメントが必要な背景昨今では、日本社会においても従業員エンゲージメントは取り組みが必要な課題として広まっています。なぜ取り組みが必要なのか、その背景を説明します。世界における日本企業の従業員エンゲージメントの低さ経済産業省の資料によると、日本企業の従業員エンゲージメントは国際的に見て低い水準で、139カ国中132位と報告されています。熱意を持つ従業員はわずか6%で、自社への貢献意欲の向上が課題とされています。調査では、24%が不満をまき散らす無気力な社員であり、70%がやる気を欠いていると報告され、これらの従業員に対するサポートが必要とされています。経済産業省 産業人材政策室 参考資料 P42https://www.meti.go.jp/shingikai/economy/kigyokachikojo/pdf/202009303.pdf?fsi=5BlFeWhQ働き方の変化新型コロナウイルスの影響で、多くの企業で働き方が変わり、リモートワークや在宅ワークが一般的になりました。これにより、従業員が「会社のために働いている」「会社に貢献している」という認識が難しくなりました。働き方の変化は、従業員のモチベーション低下などにつながる可能性があります。人材流動性の高まり近年、終身雇用が当たり前でなくなり、転職や起業が身近になりました。従業員エンゲージメントを向上させないと、有望な人材が流出する可能性が高まります。自社にとって働き続ける魅力を提供し、人材確保を優先するためにも、従業員エンゲージメントの向上がますます重要視されています。グローバル化による外国人従業員への対応会社のグローバル化が進む中、国内外の外国人従業員や海外の現地従業員との効果的なコミュニケーションがますます重要視されています。従業員が会社の理念を理解し、共通の目標に向かって働くためには、国内外を問わず従業員エンゲージメントの向上が必要です。特に、今後企業活動がグローバルに展開し、世界的な競争力が求められる場合には、従業員エンゲージメントの向上が組織の力を高める重要な施策となるでしょう。従業員エンゲージメント向上におけるメリット従業員エンゲージメントを高めるとどのようなメリットがあるのでしょうか?企業における利点を上げていきます。職場の活性化につながる従業員エンゲージメントを向上させることで、組織には貢献意欲の高い従業員が増加します。これにより、「目標達成のための方法」や「組織の改善策」など前向きな意見が従業員からより出やすくなります。同時に、仕事に対する"やらされ感"が減少し、従業員はより生産的に業務に取り組むことができます。職場の活性化が期待され、これが業績向上に寄与する可能性があります。顧客満足度が上昇する従業員エンゲージメントが高まると、従業員は自分の仕事に対して意義を感じ、こだわりを発揮しやすい状態になります。従業員の前向きな取り組みが増えることで、提供する商品やサービスの品質も向上しやすくなります。その結果、顧客の満足度が高まり、企業の信頼度も向上させることができるのです。離職率が低下する退職意向のある人材は、「仕事にやりがいがない」「経営方針に共感できない」などの不満を抱えています。一方で、従業員エンゲージメントが高い従業員は自組織への不満が少なく、むしろ貢献意欲にあふれています。したがって、従業員の帰属意識や愛社精神を高めることで、離職率の低減が期待できるでしょう。従業員エンゲージメントを向上させる7つの方法では、具体的にエンゲージメントを向上させるためにはどのような取り組みを行えばいいのでしょうか。7つの方法をご紹介します。1.企業理念・ビジョンを浸透させる従業員が企業の方向性を理解し、共感すると、「企業に貢献したい」という意欲が強まります。従業員エンゲージメントを高めるためには、企業の理念やビジョンを明確にすることが重要です。明確なビジョンは、「顧客や社会に提供できる価値は何か」といったポイントを示し、従業員からの賛同を得やすくします。また、良いビジョンがあっても、それが従業員に浸透していなければ意味がありません。そのため、キックオフミーティングや社内報、企業の目指すべき姿をまとめた「ブランドブック」などで従業員への周知を図ることも大切です。2.承認・称賛の文化をつくる従業員が「個人として尊重されている」と感じる環境では、自社への貢献意欲が一層高まります。上司が部下の意見をできる限り承認し、信頼して権限を委譲することが従業員エンゲージメントを高める鍵です。仕事を依頼する際に、「君の○○の実績・○○のスキルを信頼して任せるね」と期待を伝えることで、従業員は働きがいを感じやすくなります。従業員の頑張りを「称賛」することも重要で、社長賞やMVPなどの定期的な表彰の場を設けることで、従業員の自尊心が高まり、貢献意欲も一層向上するでしょう。3.社内コミュニケーションを活性化する人は「一緒に働いている人のことをよく知らない・信頼できない」という状態では、自組織への愛着も持ちにくい傾向があります。そのため、社内コミュニケーションを活発化させ、従業員同士の関係性を深めることが重要です。具体的な方法として、感謝の言葉を書いた「サンクスカード」の贈り合いや、ランチミーティングの定期開催が挙げられます。リモートワークが中心の職場では、オンラインの1on1ミーティングや社内SNSの活用も有効です。これにより、上司や同僚との接点を保ち、従業員の帰属意識を高めやすくなります。4.従業員が納得できる人事評価を行う人は正当な評価を得られない職場では、組織への貢献意欲も湧かないことがあります。従業員エンゲージメントを向上させるためには、公平性の高い人事制度を改善することが有効です。例えば、成果だけでなく、「企業理念の体現度」や「成果に至るまでのプロセス」を評価基準に加えることが考えられます。評価への納得度が高まると、従業員の仕事への積極性や意欲が向上することが期待できます。5.上司のフィードバック能力を高める従業員が「正当に評価されている」と感じるかどうかは、上司の伝え方にも影響されます。従業員エンゲージメントを向上させるためには、上司のフィードバック能力を高めることが重要です。具体的な施策として、管理職向けに「フィードバック・評価面談研修」を実施し、部下との効果的な面談方法や評価の伝え方を学ばせることが挙げられます。上司のマネジメント手法の改善は、チーム全体の意欲向上につながります。6.ワーク・ライフ・バランスを整える「休みが十分に取れない」「長時間の残業が常態化している」職場では、従業員が組織に貢献したいというモチベーションが低下します。従業員エンゲージメントを向上させるためには、休日制度や勤務時間を見直して、ワーク・ライフ・バランスを整えることが重要です。柔軟な勤務時間を調整できる「フレックスタイム制」や、有給休暇を計画的に取得するための「計画的付与」、特定の曜日を「ノー残業デー」とするなどの施策が考えられます。心身ともに健康で無理なく働ける職場環境を整えることは、従業員の組織に対する愛着を育む上での重要な一歩と言えるでしょう。7.キャリア開発を支援する従業員が自らの成長を感じられる職場ほど、「もっと組織のために働きたい」という意欲が高まります。そのため、従業員の成長を支援できるようなキャリア開発の施策を取り入れることが効果的です。具体的な方法として、「キャリアデザイン研修」を実施して従業員に今後のキャリア設計を促進することや、「管理職研修」や「中堅社員向け研修」などの階層別の研修を提供する方法があります。キャリア開発支援を充実させることで、「会社が自分の成長を大事にしてくれている」という従業員の満足度が向上し、帰属意識の向上も期待できるでしょう。まとめ従業員エンゲージメントを向上させるためには、人事制度や育成施策を抜本的に見直し、改善を図る必要があります。その際、人材育成や研修サービスの専門企業に相談することも一つの有益な方策です。人材育成の専門家からアドバイスを受けながら、自社に足りないノウハウを補完することで、より効果的な施策を企画できるでしょう。外部の専門家の視点を取り入れることで、従業員エンゲージメント向上のための具体的で効果的な手段を見つけることが期待できます。従業員エンゲージメントの状態を可視化することからはじめてみませんか?従業員エンゲージメントサービスは弊社にお任せください!